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夜の電車 [エッセイ]

勤め帰りに横浜から乗る電車は、京浜急行の快特とほぼ決まっている。後ろ4両は増結車で金沢文庫で切り離しなので、前車両に比べると空いており、いつもそこに乗るようにしている。

駅を離れてからの車窓は、意外に結構暗い。特に山側は、多くの住宅があるのに、なぜかその灯りを目にすることが少ない。ほぼ暗闇の中を、電車は駆けて行く。

空いているとはいえ、上大岡までは立っていることが多い。扉脇に立って斜め前方を見ていると、日ノ出町駅の手前から南太田駅にかけて、線路が右に大きくカーブしている。スモークガラスでない車両だと、扉窓の外に車窓の光が小さく幽かに闇の中に浮き上がり、遠くの先頭車両まで綿々と連なって見える。車列の輪郭も、暗くうっすらとわかる。

遠くにぼおっと青白い光が見えたかと思うと、みるみる近づいてくる。そして蛍光灯の光の列が、弧を描くように見えてくる。通過駅の灯りだ。電車は光に一瞬飲み込まれ、人もまばらなプラットホームを通過し、また暗闇の中に戻っていく。

その風景を見ていると、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い出した。空こそ飛びはしないが、光と闇の織り成す様は、まさに銀河鉄道そのものだ。我々は、日々銀河鉄道に乗って暮らしている。ただ、それに気付くことはほとんどないけれど。

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