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夜間飛行 [エッセイ]

 普段は通路側を取るフライトが、混雑で窓側しか取れなかった。羽田午後三時過ぎ発のフランクフルト行きは、出発して程なく夜間飛行となった。

 一眠りして窓の外を見ると、月明かりの中、翼の一部に胴体の黒い影をくっきりと写しながら、機はシベリア上空を飛んでいた。薄い雲の下に、まばらな明かりがそこかしこに散らばって見えた。人が暮らしている確かな証なのだが、そこで人がどんな生活を送っているのか、想像もつかなかった。

 少し眠ってまた外を見ると、今度は分厚い雲の上を飛んでいた。都市のある部分は、雲がぼんやりオレンジ色に弱く光っていた。さらに見ていると、一瞬別の雲が青白く光った。雷を上から眺めるのも珍しい。翼の上は一面の星空だった。サン・テグジュペリの夜間飛行の最後のシーンを思い出した。

2015年11月 記

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