SSブログ

夏みかんと八朔 [エッセイ]

親の実家のあった能美島には、みかん畑があった。実家から歩いていける山の斜面が段々畑のようになっており、そこに夏みかんや八朔の木が整然と植わっていた。温州みかんはその畑では採れなかったと思う。

夏みかんは大振りの、かなりごつごつした黄色いみかん、八朔はそれよりやや小振りで、夏みかんよりつるっとした表面で、色もオレンジ色の入った黄色だった。

子供の頃は夏場に夏みかん、冬場に八朔を山ほどもらって帰った。夏みかんは少し苦味があり、とんでもなく酸っぱかったので、専らジュースにして、砂糖を入れてレモネードのように飲んだ。ジュースにして飲むと、その独特の風味が爽やかで、美味かった。八朔は夏みかんよりは甘かったので、厚い皮をむいて普通のみかんと同じように食べることが多かった。

夏みかんも八朔も、高校の頃には既にあまり食べなくなっていた。栽培する人が減ったせいなのかもしれない。それと入れ替わるように、日本ではグレープフルーツがポピュラーになった。1970年代の話だ。

山は人手が入らないとすぐに野生に帰る。みかんの木も、今ではすっかり雑木林の中に飲み込まれてしまって、久しいことだろう。

夏みかんや八朔は関東ではほとんど見かけない。今でも季節になると、時々それらの味や香りが懐かしく思い出される。
夏みかんと八朔.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。