SSブログ

ゲイシャコーヒー [エッセイ]

 2021年7月の転職が決まり、新横浜を去ることになった。転職自体は4月に決まったのだが、運悪く7月度の特許調査の配分が決まったばかりで、急に担当者を変えるわけにはいかなかった。結局6月中に7月案件を済ませてから退職することになった。

 さらに運が悪いことに、7月度は案件数が普段より多かった。消化できる案件数は、概ね時間に比例する。ゴールデンウィークや週末も仕事を持ち帰って、案件をこなす日々が続いた。4月にはまだ20件近くあった残件は、時間の経過と共に確実に減っていった。そして6月23日にすべての仕事を終えた。

 仕事を終えたら、ポティエ珈琲店のゲイシャコーヒーを飲もうと決めていた。ゲイシャは日本の芸者ではなく、エチオピアの地名から由来しているそうだ。21世紀に入ってからパナマの高地で栽培されたゲイシャが一躍世界の注目を浴び、それ以来、高級珈琲の仲間入りをしたらしい。以前NHKのある番組でこのコーヒーが取り上げられたことがあり、それでゲイシャコーヒーのことを覚えていた。

 この滅多にお目にかかれないゲイシャコーヒーが、馴染みのポティエ珈琲店のメニューにあることは前から知っていた。ただ一杯1000円するので、気軽に飲める代物ではなかった。新横浜を去ればもう飲む機会はほぼない。そう思っていた。

 午後3時前に事務所を出て、珈琲店に向かう(仕事中、自由に中座できることは、この仕事の良い点ではあった)。お店までは、歩いて1分もかからない。いつもより混んでいて、普段座る対面2人掛けのテーブル席が埋まっていた。空いていたカウンターに席を取り、ゲイシャコーヒーをブラックで注文した。

 しばらくして、珈琲が出てきた。
20210623 coffee.JPG
白のカップとソーサーに、ロータスビスケットが一枚添えられていて、見た目は普段と全く変わらない。普段はインスタントコーヒーやコンビニのドリップコーヒーくらいしか飲まない身にとって、高級珈琲の味を語るのは容易ではない。熱々のコーヒーを少しすすってわかったのは、苦味の抑えられた、浅煎り系のコーヒーだということ。お店のメニューに載っている味の三角形を見ると、苦味から一番離れ、甘味と酸味を結ぶ辺の真ん中に星印が打ってあった。飲んだ感じは甘味と言うよりも、旨味的な味だろうか。それに上品な酸味が加わった印象だった。途中で水を一口飲むと、酸味がすごくフルーティな味わいに変わった気がした。

 軽やかな、そして後味の実に爽やかなコーヒーを飲み終えて、お店を出た。時間をかけてゆっくり飲み終えたつもりだったが、お店への滞在は結局30分にも満たなかった。次にゲイシャコーヒーをお店で飲むのはいつになるだろう。貧乏性なので、次の大きな節目的な時でないと飲まないかもしれないが、それがいつになるのか、今のところ見当もつかない。

2021年7月 記
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。