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お盆 [エッセイ]

若い頃は、お盆と言えば父母の実家のあった能美島に帰るのが恒例だった。特に、母の実家のある大附に寄るのが楽しみだった。実家は母方の一族が海運業で羽振りの良かった時代に建てたもので、太い梁を何本も使った立派な古民家だった。当時は母の兄弟は皆家を出ていて、親戚の人が住んでいた。

呉から音戸大橋を渡り、早瀬大橋から能美島に入り、昼前に実家に着くと、父は小古江の自分の実家やみかん畑の手入れに寄って、午後まで帰ってこなかった。

お昼をどうしたかは覚えていない。素麺か何か、呼ばれたかもしれない。お昼の後、実家の裏手を抜けると、すぐに小さな砂浜に出た。小さな防波堤が突き出ていて、その先端には石の階段が付いていた。

階段の下はちょっとした深みになっていて、石の階段の上の段から深みに向けて、地元の子らと一緒に、頭から飛び込んで遊んでいた。海から階段までの高さは、2mはあったと思う。頭を保護するために、手を組んで逆さに向けて、組んだ掌から海に入るようにして飛び込んでいた。

水遊びをして帰ってきたら、冷たいプラムジュースをいただいた。眠くなると、四角いい草の枕を借りて、広い和室で昼寝をした。扇風機のそよ風の下での昼寝は気持ち良かった。父が迎えに帰ってくると、実家を後にして帰路に着いた。もう40年ほど前の話だ。

会社の昼食で、プラムジュースを飲んだ時に、ふとその時の心地よい想い出が甦った。

2020年7月 記
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