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ライトプレーン [エッセイ]

 小学生の頃、ライトプレーンを作ってよく飛ばしていた。ライトプレーンとは、竹ひごをアルミのニューム管でつないで、翼断面形状の薄い木の板と組み合わせて骨組みを作り、その上に和紙を張って主翼と尾翼を作り、それらを木の棒の胴体につないで作るゴム動力の模型飛行機だ。実家の前の空き地ではこれを飛ばすには手狭なので、近くの青少年文化センターのグラウンド(当時は人工芝などなく土のグラウンドだった)まで出かけて飛ばしていた。三角屋根のユニークな建屋があるこの場所は子供のころの遊び場で、良く友人と野球をやって遊んでいた場所でもある。野球といっても柔らかいゴムボールを手で打つもので、バットもグラブも使わない手軽なものだった。

作ったライトプレーンは飛ぶには飛ぶが、飛行速度が遅く、高度も距離もそんなに飛ばなかった。着陸の場所や姿勢が悪いと、和紙がすぐ破れたりした。子供なりに改善の方法を考えた結果、和紙の代わりにサランラップを翼に貼ってみることにした。普通和紙は主翼の上面にだけ貼るが、上面下面両方に貼った方が、より立体的な翼らしくなる。そう思って主翼にはサランラップを両面に貼って、改良型の機体を持って、文化センターのグラウンドに出かけた。

ゴムを目いっぱい巻いて飛ばした機体は、今までと違って恐ろしくスピードが出た。そして、これまで飛んだことのない高度まで上がり、グラウンドを出て、遠く山林の中に消えていった。どこまで飛んで行ったのかもわからず、回収もできなかった。ただ唖然として、遠く去っていく機体を見送るしかなかった。今思えば、滑らかな材料で翼の両面を覆ったため空気抵抗が減り、機体の揚抗比が上がったのだと思う。改良型の一回きりのフライトは、こうしてあっけなく終わった。

谷口ジローの「歩くひと」の第4話「木のぼり」の中に、主人公が、子供が飛ばして大木に引っかかったライトプレーンを、木に登って取ってやる場面がある。それを読んで、昔飛ばしていたライトプレーンのことを思い出した。もう一度サランラップの機体を作って飛ばしてみたい気もするが、海の公園だと海に飛んでいってはまずいし、称名寺の裏手の空き地だったら飛ばせるだろうか。そんなことを考えてみたりした。
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ポルト [二度と行けなさそうな場所]

久しぶりの昔の海外出張記事、今回は2004年11月に訪問したポルトガルのポルトです。この出張については珍しく日記風のメモを残していたので、それベースにエッセイ風にまとめてみます。当時の文章を今読み返すと不要な勢いがあったり、冗長だったり、若干違和感を覚えますが、良くも悪くも当時の自分はこうだったんだ、ということで、敢えてあまり修正を加えずに以下に使用しました。

2004年11月17日
 初めてJALのビジネスクラスに乗る。一新された座席は電動式で、寝る時は傾斜はあるもののほぼシートがフラットになる。一昔前のビジネスシートと比べると雲泥の差である。液晶画面も大きく、映画やゲーム等も充実している。ただ個人的に残念なのは、ANAのビジネスクラスで見られる小林克也の「ベストヒットUSA」が見られないこと。
 機内は快適に過ごせたが、あいにく向かい風が強くパリへの到着が30分以上遅れ、ゲートを出たのが4時半だった。乗り継ぎ便の搭乗開始時間が4時45分とほとんど時間がない。到着ゲートでJALのグラホスの女性が私の名前を書いたカードを持って立っている。どうやら乗り継ぎのやばい人は他に2人いるらしい。3人揃った所でダッシュが始まった。身軽なグラホスの人はどんどん先を走っていく。ついに彼女は本気で走り始めた。大荷物を手にした我々3人は彼女を見失わないように、人ごみを曲芸まがいにかき分けながらこれまた本気で走ってついてゆく。さながら刑事が犯人を追いかける、の図である。思わずBGMに「太陽にほえろ!」がかかる。そうして入国審査を突破し、シャトルバスを捕まえ、降りた先で再びダッシュし、セキュリティを潜り抜け、何とか搭乗時間に間に合った。
 エールフランス2036便が曇り空のドゴール空港を飛び立ったのは、午後5時15分。上空に上ると夕焼けが見えた。
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夕焼けは時がたつにつれ鮮やかになり、ポルトに着く頃には眼下の地上の夜景と、その向こうに広がる漆黒の大西洋と、海の水平線を彩る深紅の夕焼けの帯と、そしてそれを吸い込むような夜空が一枚の絵となって見えた。サン・テジュクペリが郵便飛行士をしていたころも、機上から同じような景色を見ただろうか?そんな昔に少し思いをはせた。
 ポルトのメリディアンホテルでは、チェックイン時にウェルカム・サービスでデキャンタからポルトワインが振舞われた。洒落たサービスである。大変美味だったが、いかんせん酒が飲めないので、2,3口飲んでお礼をいいグラスを返した。残念である。

2004年11月18日
 早朝2時半ごろ目が覚める。結構な音量でへたくそな「マイ・ウェイ」が聞こえる。外にカラオケバーでもあるのか?結局滞在した3日間ともこの未明のカラオケを聞かされるはめになり、機内でもらった耳栓のお世話になる。
 初日の午前中は唯一の観光時間である。地図を見ると、ホテルから街の中心部まで4Km程度。これなら歩いていける、気合を入れてホテルを出た。
 ・・・地図ではわからないことがある。それは土地の高低差である。ポルトの街は、さながらスキー場のゲレンデの中に作られた街であった。おまけに中心部は道がわかりにくい。スキー場の中級コースのような長い長い下り坂を下ると、誤ってアラビダ橋上流側のドウロ川沿いに出た。
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今度は市電のレール沿いに、スキー場であればリフトで上っていくような長い長い上り坂を登っていく。そんなことを何度か繰り返しながら、ようやくの思いでクレリゴス教会にたどりついた。そこは高さ76メートルの塔に登れることで有名である。
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礼拝堂にお参りした後、教会横の入り口を入って右の階段を少し上り、格子戸をたたいて中に入れてもらう。早速1.5ユーロ払って塔に登る。狭く暗い螺旋の石段が延々と続く。高度76メートルをなめてはいけない。すでに酷使している足に鞭打って上っているとついに膝が笑い始めた。やがて突然視界が明るく開ける。小さな展望台に着く。展望台からは、少し朝もやの残る青空の下、レンガ色の屋根に覆われたポルト市街を一望にすることができた。
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下りも苦労したことは言うまでもない。
 塔を後にしてドン・ペドロ4世の像の前を通り過ぎ、
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サンベント駅に立ち寄った。ここは19世紀に建てられた鉄道駅で、青のアズレージョ(ポルトガルタイル)で飾られたロビーが美しい。
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そこを過ぎて南に下ると、ポルト大聖堂に出る。
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ここは12世紀建造のポルトで最古の教会で、モスクを思わせる2つの塔を持つファサードと、荘厳な礼拝堂がある。
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回廊のアズレージョも美しいらしいのだが、当時はそれを知らず、入らなかった。今思えば残念なことをした。
 大聖堂を出て、エッフェルの弟子が設計したといわれる、お目当てのドン・ルイス一世橋までたどりつくには、中級コース並みの坂を一度下って、また上らなければならない。橋の近くまで来ると、あいにく改装工事中で橋の上を通行できないことに気づく。
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仕方ないので橋の下の道を使って川を渡ろうと、下に降りて行く道を探すと、奈落の底に落ちていくような急階段があり、その両側に昔ながらの民家が並んでいるのを見つける。どうやらこの道しかなさそうなので、意を決して長い石段を降り始める。足はしんどいが、ひなびた家々の玄関や軒先を眺めながら階段を降りていくのはなかなか楽しい。
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そして階段を降りきった先に巨大なドン・ルイス一世橋と、とうとうと水をたたえたドウロ川が目に飛び込んできた。工事中のため、橋の勇姿を見ることができないのは残念であった。
 橋を渡って対岸からポルト市街を見る。ここからの風景が一番美しい。教会の塔から広がるレンガ色の屋根の色と、川沿いのカラフルな建屋と、橋と、ポートワインを運ぶ昔ながらの小さな帆船が著和して一体となった風景は長く見ていても飽きない。
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他の多くの旅行客たちも川岸に腰かけて、この風景をいつまでも眺めていた。さすが世界遺産だけのことはある。
 対岸に渡った大きな目的は、風景もさることながら、ポートワインの酒蔵を訪れることにあった。対岸には老舗のポートワイナリーが何軒もあり、どれも興味を引かれたが、時間がないので日本でも有名なSandemanの酒蔵を訪問する。
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3ユーロ支払い、正午からの英語ツアーを予約した。ツアー客は、人目でアメリカ人とわかる夫婦と私と3人だけだった。マントとソンブレロをまとった若い女の子に案内され、暗い酒蔵を巡る。中に入った途端、ポートワインの甘い香りに包まれる。その中をめぐりながら、ポートワインの造り方、年を経るにつれ色・香りが変わっていくこと、かつて水害で酒蔵が人の背の高さ以上に水浸しになったこと、などが説明される。蔵の中にはヴィンテージ物を保管する棚もあり、その数字を見ると、1937年の文字も見える。老舗の歴史が感じられた。
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蔵の見学が終わると、食堂のようなエリアで3種類のポートワインの試飲のために、3つの小さなグラスが運ばれてきた。午後から仕事なのでアルコールは飲めない。アメリカ人夫婦に事情を説明して、3つとも差し上げた。見学後はポートワインの販売所で、20年物を買って帰った。帰国後飲んだが、これは実に美味しかった。最近の酒屋では、Tio PepeはあってもなぜかSandemanを見つけることは難しい。これも残念なことだ。

Sandemanを出た後は、橋を渡って対岸に戻り、タクシーでホテルに帰った。その日の午後から帰国までは、ほぼ仕事一色で終わったが、夜日本からの関係者と会食する機会があった。ポルトガルの料理は、フランス、イタリア、スペインといった他のラテン系諸国の料理と比べると、素朴な印象を受けたが、焼き魚料理も普通にあったりして、親近感を感じた。機会があれば、また訪問してみたい場所だが、昨今のコロナ禍の状況だと、いつ再び普通に海外旅行ができるようになるのか、見当もつかない。
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吟香 鳥飼 [食べ物]

今年、我が家の正月用に買ったお酒が、
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吟香 鳥飼。熊本人吉の米焼酎です。
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箱の中には小さな冊子が入っていて、草津蒸留所の豊かな自然の風景が載っています。この焼酎がこのような環境の中から生まれたことがわかります。
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この焼酎を知ったのは、テレビ朝日の「ポツンと一軒家」。ここで紹介された社長さんが、外見も生き様も格好いい方で、それで気になって購入したのがきっかけです。飲んでみると、日本酒の大吟醸のような香りがして、それでいて味は焼酎。日本酒のような甘ったるさがなく、かといって芋焼酎などのような癖もなく、すっきりとした飲み味が気に入って、今回リピートで購入した次第です。価格は税込みで2200円と若干高めですが、お勧めの焼酎です。このような豊かな自然の中で生まれた味が、次の世代以降にもずっと受け継がれていってほしいと思います。
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